「クトゥルフ神話怪物図鑑」は買わないほうがいい?徹底レビュー!
略して【クトゥモン図鑑】のレビューをしていきます。
結論から言うと、単純に多くの神話生物について「データとして知りたい!」という人には少し物足りないかも。しかし、絵師さんやドリームランド(幻夢境)の興味がある人、冒涜的で美しいイラストを見たい人には十分価値はあります。
また、本書の特徴である野外観察図鑑(フィールドガイド)の体裁をとって説明しているのが面白かったです。これについては後述します。
※本書の目次には「怪物たち」と書かれていますが、ここでは「神話生物」と記載します。
ページ内容
総ページは127P
内、神話生物について直接的な記載があるのは114P
どの生物も両開きで紹介されており、左側は説明。右側はイラストとなっています。
また、本書は【クトゥルフ神話の怪物たち】と【ドリームランドの怪物たち】の2部構成になっています。
イラストについて
神話生物がデカデカとB5サイズ(レポート用紙・辞書・教科書 サイズ)で
細部まで描写されているので、とても冒涜的かつ圧巻で、見ているだけで楽しいです。
神話生物を描きたい熱心で敬謙な信者(絵師さん)がいればには画集としてとても役に立つのでは?と思いました。
【野外観察図鑑(フィールドガイド)】
本書では神話生物の説明の仕方が独特です。
【生息域】【分布】【生態と習性】の3つに分けて解説されています。
どんな環境で生きているか、棲家などについて
どこいるか、具体的な生息場所などについて
特殊な器官や行動パターンなどについて
神話生物が「どんな環境」で「どんな場所」にいて「どんな生活」をしているか
フィールドガイド(ワーク)しながら観察しているようで、
さながらファーブル神話生物記て感じです。
中には神話生物の移動方法を一コマずつ書いているものもあり、ニャルラトホテプの移動方法も書いてあります。なんだその中国雑技団みたいな移動方法は……。
怪物識別ガイド
本書を読んでもっとも「うーん……?」と思ったのがコレです。これは知りたい神話生物の特徴をYESかNOかで答えていくと、その矢印の方向に「目当ての神話生物」か「それに近い生物に」辿り着ける?というものらしいのですが、この本の中の生物しか辿り着けないので、このガイドの使用機会はあまりないかもです。
クトゥルフ神話の怪物たち
基本ルルブ(クトゥルフ神話TRPG)にのっている神話生物27体を収録しています。
※しかし、ルルイエの王【大いなるクトゥルフ】は記載がありません。
一応、「クトゥルフの星の落とし子」は記載があります。ちなみに表紙のやつは「落とし子」です。これは少しびっくりしました。なんでだろうなーって考えたんですが、基本ルルブにはこの落とし子の名前の横に《眠る者たちの総督》って書いてあるので、それで落とし子=大いなるクトゥルフと勘違いしたかも??
(【大いなるクトゥルフ・ルルイエの王】は基本ルルブ(第21刷発行)だとP214に記載されてますよ。)
ドリームランドの怪物たち
こちらはドリームランドに主に生息する神話生物が26体収録してます。
大多数は基本ルルブには乗っていないものばかりです。
その前に【ドリームランド】について少し解説します。
ドリームランドとは、いわゆる「夢の国」です。しかし、誰でも夢を見ている間にその世界に入れるわけではありません。夢の中で果てしない階段を降り、ふさわしい者だけその領域に足を踏み込めます。ドリームランドでは猫がしゃべり、船が大空を進むその光景は、 まさに夢の国そのもの。その中で生息する生物を一部紹介します。
《一部紹介》
*美しい旋律を奏で、花の蜜と芳香、そして静寂だけを餌とする【チョウドラゴン】
*ぼんやりと空中を漂い、クラゲと深海魚を混ぜたような友好的で儚い生物【プループ】
*宝石を装飾したケーブルを繋ぎ合わせような猫性の悪意【土星からの猫】
また、「正気度喪失がない神話生物(SAN値チェックがそもそもない)」をこの本で初めて知りました。上記だと【チョウドラゴン】・【プループ】が該当します。これはどちらも人間が飼いそうすれば、できなくもない生物なので、シナリオを作る上でいいアイディアになる気がします。
総評
情報量的には正直少なく感じるのは致し方ないと思います。しかし、クトゥルフ神話でよく使われる「形容しがたい、名状しがたい、」生物を容易にイメージできる本は中々ないと思います。ラグ・クラフト作品は私的には硬派な文体だと思ってます。この本を読めば、内容が理解できなくでも、イメージはできると思いました。
また、ドリームランドをメインにシナリオ創作したい人、そもそもドリームランドに興味がある人、冒涜的で美しい怪物をみたい人には、買う価値がある一冊になると思います。