~流行・人気・ヒットの秘密をわかりやすく紹介!!~

消費者ニーズを的確に把握して大ヒット!「午後の紅茶」

古井龍
WRITER
 
この記事を書いている人 - WRITER -
古井龍
TRPGとライフハックをメインに取り上げる。 上級心理カウンセラーとダイエットアドバイザーの資格を持っている名状しがたい何か。

もはや時間を問わず飲まれ続けている「午後の紅茶」
販売しているのはキリン(キリンビバレッジ)です。

・嗜好の多様化

まず、商品販売時期の飲料市場のお話しをします。
1970年代以前、日本の清涼飲料市場は、炭酸飲料や果汁飲料が中心でした。
しかし、1980年代に入ると、人々の嗜好の多様化が進み、コーヒー飲料や、ウーロン茶などが発売されるようになります。
人々が清涼飲料に求めるものは、のどの渇きを癒すことや、清涼感だけではなくなってきたのです。
また、1980年代は1.5Lのペットボトル容器入りの飲料が発売され、容器の大型化が進んだ時代でもあります。
そこで、当時のキリンビールの清涼飲料開発チームでは、
「家族で飲める」今までにない1.5Lのペットボトル入りのお茶関係の商品をつくろうと考えました。

そこで候補にあがったのが、紅茶だったのです。
当時、家庭ではすでに紅茶が手軽にティーバッグなどで飲まれていました。
しかし、家庭でアイスティーをつくるのは意外と手間がかかります。
紅茶を抽出して、砂糖を溶かして、氷を入れてつくらなければなりません。
開発チームは、家庭でも手軽に飲むことができる、本格的なおいしさのペットボトル入りの紅茶をつくろうと考えました。
しかし、紅茶を選んだこと、容器をペットボトルにしたこと。この2つが悩みの種にもなります。

・クリームダウン現象

ところで、「クリームダウン現象」ってしってますか?
温かい紅茶を冷やすと、茶葉に含まれるカフェインや渋みを感じるタンニンが固まり結合することで白く濁ることがあります。
これを「クリームダウン現象」と言うのです。

缶商品であれば中身が見えなく見た目をそこまで気にする必要はありません。
ですが、透明のペットボトル容器では色合いが重要になります。
日本に紅茶文化を根づかせるため、家庭で手軽に飲める紅茶飲料をコンセプトにしていることから、
ペットボトルの使用を簡単に譲ることはできない。

この問題に開発チームは頭を抱えます。
茶葉の選定、抽出法の工夫など、あらゆることを試し、ついににごらない「クリアアイスティー製法」を開発します。
この技術は、当時の清涼飲料業界では画期的な技術革新でした。
茶葉には比較的タンニンが少ないと言われるスリランカ産のディンブラ茶葉を使用します。

名称は紅茶の本場イギリスの習慣となっているアフタヌーンティーを日本語に訳し「午後の紅茶」にしました。
また貴婦人のイラストは『アフタヌーンティーの習慣の創始者』とされる、19世紀後半にイギリスに実在した人物・ベッドフォード公爵夫人となっています。

19世紀の貴族生活では『イングリッシュ・ブレックファースト』と呼ばれる盛りだくさんの朝食をとり、昼食はピクニックなどで少量のパンや干し肉、フルーツなどで軽くすませるというものでした。

そして、社交を兼ねた晩餐は、音楽会や観劇の後で、夜の8時頃になっていたので、昼食から夕食までには空腹はかなりなものになってしまいます。
そこで、夫人は午後の3時から5時頃の間にサンドイッチや焼き菓子を食べ、同時にお茶を飲みはじめます。
当初は夫人だけがこの習慣を取り入れていましたが、それが他の貴族にも広がったことが「アフタヌーンティー」のきっかけだそうですよ。

こうして、「キリン 午後の紅茶」は1.5Lペットボトル入りのストレートティーとして、1986年10月に発売されたのです。
発売から2年後の1988年、1.5Lペットボトルの好評を受け、
340グラムと250グラムの缶製品が発売されることになりました。

また、現在では定番となったレモンティーとミルクティーもこの年に発売されます。
缶製品の発売とラインナップの拡充によって、「午後の紅茶」の販売量は飛躍的に伸びました。
1996年にストレートティーで500ミリリットルのペットボトルを発売すると、リキャップできる利便性から飲用シーンが一気に拡大。翌年には出荷数が4370万ケースとなります。

ただ、この年を境に売上は一時期低迷してしまいます。
・競合の台頭と悪いイメージ

まず、キリンビバレッジの「サプリ」やJTの「ももの天然水」など、ビタミンやカルシウムといった栄養素が入った飲料が流行ったこと、
ミネラルウォーターの台頭により「紅茶飲料の存在感が相対的に薄まってしまった」
と同社は分析しました。
そして、この傾向は02年まで続き同年の出荷数は2663万ケースとなり、97年と比べ約60%まで落ち込みます。
危機感を覚え、消費者好調査を徹底的に行うと、「紅茶は砂糖が入っていて甘いので、飲むのに抵抗がある」との声が多く上がります。

しかし紅茶はストレートティーの場合、100ミリリットル中16キロカロリー程度とそれほどカロリーは高くなく、脂肪分も入っていません。
消費者のちょっとした誤解によって悪いイメージがついてしまったのです。

紅茶本来の姿を消費者に伝えるために、同社は「実はヘルシー」という健康面をアピールしたキャンペーンを実施します。
ストレートティーなら「実はヘルシー」・レモンティーなら「実は無着色」・ミルクティーなら「実は低脂肪」・というような感じで広告コミュニケーションを打ち出していきます。
そうした宣伝活動は功を奏し、06年には3740万ケースまで出荷数を回復させます。

2010年は「午後の紅茶」にとって、大きな転換期になった年です。
当時すでに、同ブランドは紅茶飲料でトップシェアを獲得していましたが、
紅茶飲料市場で見ると広がりに欠けていました。

・コーヒーを飲む人に紅茶を

市場を調べてみると「1カ月の飲用率は高くなってきたが、飲用本数が伸びていなかった」そうです。
以前、コーヒーブランドを担当していた西村部長代理は「コーヒーは仕事中に飲む場合が多いため、一日の飲用本数が増える。コーヒーを飲むシーンで紅茶を飲んでもらえれば伸びるのではないか」と考えます。

紅茶はコーヒーを好んで飲む人からすれば、苦味などの後味に物足りなさを感じる。
固定化した紅茶のイメージを一度捨て、紅茶をコーヒーに近付けてみると“エスプレッソ”というキーワードが浮かびました。
茶葉の量を増やすことで、エスプレッソのような濃い味を製造する方法など、
さまざまなアイデアを考えましたが、今一つ決め手に欠けていました。
そんな時「技術陣からコーヒーのエスプレッソのように、高温・高圧で紅茶を抽出することができるかもしれない」との一報を受けます。
同工場は紅茶を濃くする技術の開発を続けていただけで、西村部長代理が特に指示していたわけではありませんでした。

2010年に「午後の紅茶 エスプレッソティー」として発売すると狙いは見事に的中。
仕事中でも紅茶を飲んでもらえるようになり、飲用シーンが広がり、
1年間の出荷数は400万ケースのヒット商品になりました。
休息時間に飲むシーンから、仕事中にも飲用場面を広げることに成功した「午後の紅茶」ですが、次は「食事の時間」も狙います。
その商品として開発されたのが「午後の紅茶 おいしい無糖」です。

・食事シーンに紅茶を

実は、1997年に無糖タイプの「午後の紅茶」は発売されていましたがご存知でしょうか?
ただこの商品は売れ行きは予想よりも低かったんです。

当初発売した商品は、既存商品の中の無糖タイプという位置づけでした。
しかし既存の紅茶を無糖にすると渋みが出て飲みにくくなっていたそうです。

今回は前回の反省を生かし、ターゲットを緑茶やウーロン茶を飲んでいる人に設定。
緑茶などと同じようなすっきりした味わいにするために、茶葉には苦味が抑えられるインド産ダージリンを使用します。
また、消費者へのPR方法も「食事と一緒に飲む紅茶」という商品コンセプトを強調するため、おにぎりと一緒に「おいしい無糖」を飲む試飲会を設けたり、CMを放映したりして認知度の向上に努めます。
同商品の12年の出荷数は509万ケースと、出荷を伸ばした「エスプレッソティー」を凌ぐ売上となります。

当初は家庭で手軽に飲んでもらいたいとの思いで発売されていましたが、今は休憩中・仕事中・食事中などにも飲用シーンは広がっています。
紅茶文化を日本に根づかせることに成功したのは、消費者のニーズを的確に把握した緻密なブランドマーケティングだったということですね。

それではヒットしたポイントをまとめます。
(1)理想の見た目にするまで試行錯誤を繰り返す
(2)消費者調査からブランドコンセプトを改める
(3)利用時間を変える。
この記事を書いている人 - WRITER -
古井龍
TRPGとライフハックをメインに取り上げる。 上級心理カウンセラーとダイエットアドバイザーの資格を持っている名状しがたい何か。

Copyright© 流行研究所 , 2020 All Rights Reserved.